株式会社損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)とNKSJシステムズ株式会社(以下、NKSJシステムズ)は、国内損保業界初の取り組みとして、損保ジャパングループ会社共通のシステム基盤をクラウド上に構築。システム構築・運用コストの削減やセキュリティ、事業継続計画などの強化を図る。その基盤に「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」を採用。クラウドサービスの豊富な実績や多様なニーズに応えるノウハウ、高い信頼性が評価された。
コスト削減やITガバナンスの強化を目指して共通基盤を構築
損保ジャパンと日本興亜損害保険株式会社は関係当局の認可などを前提に2014年9月1日に合併する。新会社の「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」は、損害保険会社単体としては国内で最も収入保険料が大きい会社となる。
規模だけでなくサービス品質でも業界をリードし、トップレベルの事業効率と収益性を安定的に維持していく。そして、お客様の安心・安全を支援する先進的なサービスを提供することで、真のサービス産業への進化を図るとともに、さらなる成長を目指して海外にも取り組みを拡大。新会社の目指す企業像である「世界で伍していく会社」を目指していくという。
こうした方針のもと、NKSJグループ各社のシステムの構築・運用などを担うNKSJシステムズは、損保ジャパングループ会社共通のシステム基盤づくりを推進。その背景について、損保ジャパンのIT企画部 IT推進グループ 担当課長である大西武史氏は「これまでグループ会社独自でシステムを構築・運用しており、様々な課題が持ち上がっていました」と述べる。
グループ会社ごとに個別のシステムを構築・運用するのでコストが割高になり、その削減策が求められていたという。また、セキュリティ対策も会社ごとに異なるため、グループ全体で統一したITガバナンスが必要だった。そして、人員的な面でも運用に課題があった。IT担当者を配置できる会社でも、様々なシステム運用を担うことから、負荷軽減が課題だったのだ。
「これらの課題に加え、システムへの適切な投資や将来的な拡張性、さらにはガバナンス強化を考慮した場合、インフラ部分を共通化し、システムをクラウド上に構築することが現実的ではないかと検討を始めました」と大西氏は経緯を説明する。
信頼性や実績、サポート体制を評価してIIJのクラウドを採用
NKSJシステムズでは、クラウドサービスの選定に当たり、複数の事業者を比較・検討した。NKSJシステムズ 常務執行役員の小澤淳氏は「コスト、信頼性、実績、サポート体制をポイントに各社のクラウドサービスを検討し、IIJ GIOサービスの導入を決定しました」と述べる。
採用した「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」は、IIJ GIO上に専用のVMware仮想化環境を提供。VMwareから仮想基盤上のOSやアプリケーションを自由に設計・構築できるだけでなく、個別にサーバやストレージ、通信ネットワークといったITリソースを保有することなく、業務環境や要件に応じたシステムをクラウド上に構築が可能だ。さらに、ITリソースの調達が不要のため、システム構築のリードタイムを短縮できるといった特長もある。クラウド共通基盤上にグループ各社のシステムを構築することで、個別に同等のシステムを各社で構築するより「スピーディー」「コスト削減」が実現可能となる。
また、グループの中にはミッションクリティカルな金融系システムを扱う会社も多く、万一、システムがダウンすれば業務も止まる恐れがある。そのため、信頼性の高いシステム基盤が不可欠になり、クラウドサービスのサポート体制と実績も重要視した。
「IT担当者を配置できない会社を含め、グループ会社のシステム基盤を担うため、クラウド基盤の提供だけでなく、設計や運用などきめ細かなサポート体制が重要です。また、IIJ GIOは豊富な導入実績を持ち、第三者機関の調査でも高い評価を得ており、安心して任せられると判断しました」と小澤氏は強調する。
こうした要件に加え、クラウドサービスを利用して金融機関の基幹業務システムなどを構築・運用する場合、金融情報システムセンター(FISC)では、金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準や、クラウドサービスに対する監査などに対応することが前提条件になるという。また、「必要に応じてデータセンターでのシステム運用やセキュリティ対策などをチェックすることもあり、セキュリティ対策などの各種ガイドラインへのチェックにも、迅速に対応してもらいました。素早いサポートが受けられるIIJの協力体制もクラウドサービス選定の要因になりました」と大西氏は述べる。
基幹業務システムを移行し安定稼働と事業継続に貢献
システムの設計から構築、稼働開始までわずか2カ月半の短い期間だったが、「テストを含め、順調に移行できました。システムの安定稼働とともに事業継続性が向上しグループ会社から喜ばれています」と、設計・構築を担当したNKSJシステムズの主任システムズ・エンジニア、小路智広氏は導入効果を話す。
「IIJはクラウドの活用に欠かせないネットワークやセキュリティなどのインフラを含め、多様なニーズに応えてくれるので、グループ会社にも提案しやすいですね」と小路氏は付言する。例えば、グループ共通基盤を担う関東地域のデータセンターに加え、グループ会社の要望に応じて関西地域のデータセンターにバックアップサイトを設ける構想もある。IIJのサービスを基盤にバックアップやセキュリティ、ネットワークなどをNKSJシステムズがサービスメニュー化し、グループ会社に提供することも可能だという。
グループ会社のみならず、損保ジャパンでは様々な部門システムがあり、「今後これらのシステムをクラウド共通基盤上に移行することも考えられ、コストメリットやITガバナンスの強化に役立ちます」と大西氏は見ている。そして、グループ会社の合併や既存システムのリプレースなどを契機にクラウド共通基盤への移行が加速すると見込まれるなか、小澤氏は「最新のクラウド技術を活用し、スピーディーかつ低コストのサービス提供を目指す」と力を込める。IIJ GIOサービスを基盤に損保業界初となる先進的な取り組みに注目する金融・保険関係者は多いようだ。